下の写真が製作したパワーアンプです。
このパワーアンプの特徴は次の点です。
- 手操作または赤外線リモコンで、電源ON/OFFと音量調節ができます。
- 音量調節には、手作りの電動ボリュームを使用しています。
- ボリュームツマミとその目盛りにLEDを内蔵し、ツマミ位置が明確です。
- ツマミに内蔵したLEDは、リモコンで音量調節中に点滅して作動中を示します。
- 高音質ステレオデジタルアンプ + サブウーハー用デジタルアンプで、2.1chシステムを構成します。
- 連動でON/OFFするACコンセントがあり、チューナやプレーヤなどの機器に使用可能です。
なお、アンプはデジタルアンプですが、入力信号はアナログ信号です。
2.電動ボリュームとは
電動ボリュームは、アナログ方式のボリュームにモーターを組み合わせたもので、通常のボリュームのように手で回すこともできます。近年ほとんど見かけないかもしれませんが、手を触れずにボリュームツマミが動くという、メカニカルなところに興味をひかれる人は多いと思います。
最近のオーディオ機器は、デジタル制御で音量調節するものが多くなっています。デジタル制御では、機器自体を小型・シンプルにすることが可能で、ボリュームの劣化でガリガリ鳴るようなこともなく、リモコン操作も容易に実現できます。
一方アナログ方式のボリュームは、ツマミの位置で現在の音量が視覚的にわかり、現在の音量を記憶するメモリなど不要という特長があります。さらに、電動ボリュームならリモコンによる操作も可能になります。
このアンプでは、リモコン操作の便利さとメカニカル感(メカメカしさ?)を出すために電動ボリュームを使いました。
ちなみに、電動ボリュームは部品として市販されているものがあります。左の写真は、アルプスの電動ボリュームの例です。このようなものを使えば製作は容易なのですが、今回は手作りにこだわりました。
3.アンプ基板と電源について
アンプ自体は、共立電子産業の「ハイレゾ対応デジタルアンプ(WP-AMP3118)」と「サブウーハー用デジタルアンプ(WP-AMP-SUB)」という完成基板を使用しています。
WP-AMP3118 WP-AMP-SUB
そこで、次の写真に示す、自作の「ポップノイズ防止回路基板」を作りました。このポップノイズ防止回路基板は、このアンプのために筆者がプリントパターンを起こした、オリジナルの基板です。
これらアンプの電源として、TDKラムダの「VS50E-12」という基板タイプの50Wスイッチング電源(12V 4.3A)を使いました(以降アンプ用電源)。この電源の入力は、AC100V 50/60Hz入力です。
アンプの電源には、トランスを使ったシリーズ電源の方が良いのかもしれませんが、小型化するためと発熱を抑えるためにスイッチング電源としました。
4.電動ボリュームの製作
次の写真が製作した電動ボリュームです。
ギヤおよび小型モーターは、価格や入手しやすさなどから、模型・おもちゃ用のものを使用しました。そのため、耐久性や騒音などの点で、若干の不安はあります。
小型モーターは、マブチモーターのFA-130RAと同形状で3V仕様の、HFA-130RA-2270-38(Linkman製)というモーターを使いました。
ギヤは、次の写真に示すタミヤの「工作ギヤセット(36T/12T)」というプラスチック製ギヤセットから、36T/12T 2段ギヤを4個と、8Tピニオンギヤを1個、それにシャフトに挿入するブッシュを使いました。2段ギヤは3個入りなので、この工作ギヤセットを2セット使っています。
次の図が電動ボリューム(ギヤボックス)の組立図です。a~uで示す各部品名は下の表にまとめてあります。
図中にA,B,Cで示すのは、フレームを兼ねる軸受けで、厚さ1mmの黄銅(真鍮)板製です。
aの部品はボリュームの延長シャフトで、黄銅製パイプです。パイプを使った理由は、ツマミ内部に取り付けたLEDを点灯させるための電線を通すためです。LED内蔵ツマミの作り方は、後ほど説明します。
b~hの部品が構成するのはスリップ機構の部分で、モーターがボリュームを回し切ったときにギヤを空転させるための仕組みです。ボリュームを回し切ったときにモーターを止めるような仕掛けがないので、ボリュームやモーターを痛めないようにスリップさせます。手でツマミを回した時も、スリップしてボリュームだけが回ります。
スリップ機構部分で使用している56Tの平ギヤは、タミヤの工作ギヤセットとは別に用意したものです。ただ、このギヤはφ3mmシャフト用だったので、テーパー・リーマーで6mmに広げました(φ6mmシャフトで空転する大きさです)。
bとhの部品は、フェルトを介してスプリングで56Tの平ギヤを押し付ける部品で、厚さ3mmのアクリル板を接着して作ったものです。両者とも、図にあるように横に設けたM3イモネジで延長シャフトに固定できようになっています。
スリップ機構にあるスプリングgは、線径0.65mm×外径8mm×長さ32mmの押しバネを切断して、長さ約22mmにしたものです。
iの部品はシャフトカップリングと呼ばれる、2本のシャフトを連結するものです。この電動ボリュームは、手作りということもあって、シャフトには必ずずれが生じると考えられます。そのため、多少のずれがあっても回転できるよう、このシャフトカップリングを使用しました。
oのφ3mmシャフトは長さ33mmで、黄銅丸棒を切断して作ったものです。図にはありませんが、モーターは真鍮板で作った固定金具で、軸受け板Bにビスとナットで取り付けます。
組み立てが終わった後、実際にモーターでボリュームが回るように、スプリングを押さえる部品hの位置を調整する必要があります。
このギヤボックスは、ギヤ比が1/567となります。有負荷時のモーター回転数はわかりませんが、実測では、ボリュームの左端から右端までの移動は2秒ちょっとでした。